After Effectsで絵を「描いて」動かすのは、突飛なことではありません。
「あたかも絵が動いているようにAfter Effectsを操作する」のです。
鉛筆で絵を描く時に、手で鉛筆を持って、紙に芯をあてて動かすのと同じように、方法そのものはシンプルです。
例えば、こぐまが走るムービー。
これです。
まず新規平面レイヤーを作って、体の各パーツを作ります。
ペンツールで切り抜きます。
今回のこぐまは絵柄がシンプルですので、ペンで描くというよりは、切り絵やスクリーントーン貼りのような感覚です。
ペンツールで切り抜くとマスクが自動生成されます。
マスクはキーフレームによって形状を時間軸上で変化させる事が可能です。
つまり、アニメーション=動きを表現する事ができます。
パーツ個々を動かした後は、全体を動かします。
両腕をプラプラ動かすタイミングに合わせて、走る際の体の上下の動きを足して組み合わせます。
こぐまが近づいてくる動きも足します。
After Effectsの「トランスフォーム/スケール」や「3Dレイヤー/Z座標」を使って拡大するだけです。
さらに、こぐまのデザインに合わせて、フレームレート(ポスタリゼーション時間)を8fps等に変更して、動きのパタパタ感も追加します。
小走りサイクルも、こぐまらしい速度へと、時間伸縮やタイムリマップで調整します。
最後に画面の効果を足して完成です。
素朴な絵本のような風合いにしてみました。
After Effectsにはパペットツールやメッシュワープなど、各種ディストーションエフェクトも豊富です。
今回のこぐまのようなシンプルな絵柄だけでなく、ディテールを描き込んだ絵柄もアニメーション可能です。
After Effectsによるカットアウト技法を発展させれば、様々なアニメ映像が作れるようになります。
欧米では高度に発展したカットアウト技法ですが、日本では使う人も少なく、発展途上以前の「芽すら出ていない」状態です。
一方、欧米のアニメの趣向は、日本とは大きく違います。
カットアウトで作るアニメも欧米感覚。
日本流の切り口でカットアウトを使いこなせるのは、まさに日本。
過去、ディズニーの模倣ではなく、独自の表現を切り拓いた日本のアニメ作品の数々。
欧米人が思いもよらない表現を、日本のカットアウトは成し遂げられるはずです。
そのためには、まず、日本のカットアウト技能者が増える事が必須。
従来の作画技術と併用して、カットアウトをアニメ表現技法に加えるのが、良いと考えます。
技術を切り替えるのではなく、技術の追加です。
従来の作画技術の経験と知識は、カットアウトでも大いに活用できます。
絵を動かすための根本的な知識が共通だからです。
鉛筆やタブレットペンと、カットアウトが違うのは、道具の使い方だけです。
頭の中に動きのイメージを克明に描ければ、鉛筆でもカットアウトでもアニメーション映像は作る事ができます。
今後はAfter Effectsだけでなく、MohoやLive2D、Procreate Dreams等も加えて、「日本流のカットアウト」を開拓していきたい‥‥と思っています。